私は、渡されてきた。
誰かが自分の場所から差し出したものを、受け取ってきた。
それが何なのか、うまく説明できないものもあった。
でも届いた。
赤が通ったような人たちから。
だから私も渡す。
自分のいる場所から、ここにあるものを渡す。
ずっとそうしたかった。
一般へも渡そうとした。
私はこっち側から見ていた。
向こうへ行ったことはない。
それでも、つなげようと思った。
自分を渡そうと思った。
無駄だった。
だからやめた。
今はもう、一般へ向けて書いていない。
一般じゃない人々へ向けて書いている。
私がそういう人たちから渡されてきたように。
でも、ひとつだけ、渡せないものがある。
痛みだ。
痛みだって、本当は話したかった。
言いたくないんじゃない。
言えるなら言いたかった。
だから私は、鍵のかかる場所があればいいと思っていた。
そこから外へ出ない。
誰にも漏れない。
その場所だけで話せる。
そんな場所があれば、私は痛みを話せると思っていた。
外に漏れるのは怖い。
めちゃくちゃ怖い。
今なら、なおさら怖い。
だから鍵が欲しかった。
でも、この前、その鍵の向こうへ行きかけてわかった。
鍵では足りない。
外に漏れなくても駄目だった。
その部屋にいる相手に話しただけで、同じことが起きた。
昔、私を傷つけた人ではない。
別の人だ。
なのに私が痛みを見せると、同じ場所へ来る。
私の急所を知る。
そして、使う。
容赦なく。
え、こんなに簡単に戻るんだ、と思った。
相手が同じだからじゃない。
私がそこを見せると、違う相手まで同じことをする。
だったら、私自身がそこに触れてはいけない。
少しだけ話すこともできない。
少し見せれば、そこが急所だと知られる。
知られれば、またそこを使われる。
痛かったことを話して、同じところをもう一度傷つけられる。
痛みが減るどころか、増える。
だから痛みは残る。
残ったまま、私はそこに触れない。
痛みの場所では一人。
同じ痛みの場所に立っている人だけが安全な相手なんだ。
私はそれを知った。
悲しいね。
私は、渡されてきたのに。
だから私も渡したいのに。
痛みだけは、渡そうとすると武器になって返ってくる。