同級生が、90代後半のお母さんの手を引いて、毎日散歩をしている。
人生を通じて忘れられない記憶のひとつは、そのお母さんの手作りシュークリームだ。
牛乳感に溢れたクリーム。
それが私の好み。
もう味そのものは思い出せないけれど、あの体験だけは忘れない。
今日まで、何度も何度も思い出している。
その時、「美味しい」とも言わなかったと思う。
子供の私は、感覚に対して失語していた。
ただ、シュークリームと一緒にかみしめていた。
言わなかった分、ずっと記憶に残り、今でも味わっているのかもしれない。
味わっているのは、あの思いのほうなんだろう。
うれしかった、おいしかった、一番好きな味と出会えた——そんな喜びを。